【図解】『帰納的思考』と『演繹的思考』って結局なんなの?【比較】
こんにちは、KAIです。
プロ構成ライター、戦略コンサルタントをしています。
本記事で解決できる悩み

「帰納的思考って?ピンとこない」
「演繹的思考?エンエキテキ…?」
「筋道を立てたりや分析したりするのが苦手」
大丈夫です。こんな悩みを解決します。
著者の略歴
これまで150を超える企業案件で、論理的な提案をしてきました。
帰納と演繹のイメージを視覚的に理解できる
帰納と演繹の思考法できるようになる
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帰納的思考って結局なんなの?
結論からお伝えします。
『帰納的思考』とは、複数の実例から共通点をみつけて結論を出す方法です。
まず辞書で意味を確認しておきます。
個々の特殊な事実や命題の集まりからそこに共通する性質や関係を取り出し、一般的な命題や法則を導き出すこと。
引用:「三省堂 大辞林 第三版 – 帰納」weblio辞書
帰納的思考は『推論』のテクニックのひとつです。

帰納的思考の手順
帰納的思考の具体的なプロセスは3つです。
①複数の実例をあげる
②実例の共通点をみつけだす
③共通点を根拠にして結論をだす
手順の解説に入る前に、前提知識となる注意点やポイントをお伝えします。
帰納的思考の注意点
各プロセスの注意点がわかるだけで、『帰納的思考』の本質がわかると思います。
手順 | ポイント |
---|---|
①複数の実例をあげる | 実例は事実であること |
②実例の共通点をみつけだす | 共通点に飛躍がないこと |
③共通点を根拠にして結論をだす | 結論に飛躍がないこと |
それでは解説します。
帰納的思考の手順①実例
まず、プロセスの土台になるのは「実例」です。
推論が成立するためには、実例は事実でないといけません。
上の図は、「推論」が不成立のパターンです。
「類推」は以下の記事で解説しています。
アナロジー思考とは?【最高に生産的なアイデアのパクリ方】
ポイント:複数の実例は事実であること
自分で飼っている犬が甘いものを好むことはあるかもしれません。
ただし、どの犬もそうだとは言い切れません。
実例でない(事実でない)ため、推論としては不十分です。
帰納的思考の手順②共通点
まずは例をご覧ください。
成立するか確認します。
ポイント:実例の共通点に飛躍がないこと
犬 / 猫 / 象 を一括りにしたときに、地球上のすべてのいきものと表現するのはあまりに強引でしょう。
「論理的な思考」は以下の記事で解説しています。
論理的思考とは?結論を導くプロセスを【徹底図説】
論理的に考えるには?【因果関係】を見つけよう!
帰納的思考の手順③結論
もう一度、例をご覧ください。

ポイント:共通点から結論へ飛躍がないこと
甘いものが好きだからといって、砂糖水を飲ませようというのも極端な結論ですね。
「論理の飛躍」は以下の記事で解説しています。
論理的な文章の書き方【重要】なのは伝える順番
帰納的思考のもっとも注意すべき点【推論は手段】
無理がある推論が生まれるのは、だれでも自分の結論は成立させたいという「意思」や「主観」が働くからです。
帰納的思考はあくまで建設的に、「答えなき答え」を探す手段です。
手段を優先するあまり、結論ありきの答えをだしてしまわないように注意しましょう。
「客観と主観」は以下の記事で解説しています。
客観的な思考とは?他人が『評価』できるための【形容詞置換法】
「メタ思考とは?絶対に気づくべき思考の癖【2つの思考法で改善】」
帰納的思考のホントのところ
たとえば、次のようなエピソードからどんな行動をしますか?
恋人Aのエピソードの場合。
・先週、Aはインスタであのアクセサリーをなんども見ていた
・先月、Aはネックレス無くした
・前からAはずっとつけていられるプレゼントを欲しがっていた
3つのエピソードから共通点を見つけて、Aさんにネックレスをプレゼントする。
これも立派な帰納的思考をつかった「推論」です。
演繹的思考って結局なんなの?
一方の演繹的思考についても結論からお伝えします。
『演繹的思考』とは、ものごとの大前提や一般的なルールを判断基準にして、結論を導き出す方法です。
辞書での意味も確認しておきます。
①諸前提から論理の規則にしたがって必然的に結論を導き出すこと。
普通、一般的原理から特殊な原理や事実を導くことをいう。演繹的推理。
②一つの事柄から、他の事柄に意義をおしひろめて述べること。
引用:「三省堂 大辞林 第三版 – 演繹」weblio辞書
もうひとつ別の辞書からです。
ある命題から論理の規則にしたがって結論を導くこと
「難読語辞典 – 演繹」weblio辞書
「一般的なルールに当てはめるって、当たり前じゃない?」という理解も間違いではありません。
なぜ、演繹的思考を理解する必要があるのかは、具体的な思考法ステップを解説しながらお伝えします。
演繹的思考法の手順①ルール
ここから具体的に『演繹的思考法』のステップを解説します。
①大前提やルールを特定する
②大前提やルールに物事を当てはめる
③大前提やルールに合致しているかどうかで結論を出す
一般的な演繹的思考の図説は、以下のようなタイプが多いです。

ただ、私個人としてはこの図説がなかなか腑に落ちませんでした。
そこで、演繹的思考のイメージをこう変えてみました。
説明しますね。
・大前提の枠内におさまれば、演繹的に論理が成立。 ・大前提の枠外にはみでたら、演繹的に論理が不成立。
具体例と合わせて、理解の糸口をつかみましょう。
具体例
たとえば、目の前の信号が赤の時、あなたはどうしますか?
赤信号 → 止まる
じつはこれが演繹的思考です。
「止まる」という結論を出すまでの「思考の流れ」を理解しましょう。
①「赤信号では止まる」というルールがある
②「信号が赤」という現象が起こる
③ルールにしたがって「止まる」と結論をだす
つまりは整理すると次のようになります。
基準:赤信号では止まる
現象:信号が赤
結論:止まる
結論はたしかに正しいと確認できますね。
演繹的思考の手順②大前提

おさらいします。
①大前提やルールを特定する
②大前提やルールに物事を当てはめる
③大前提やルールに合致しているかどうかで結論を出す
理解を深めるために、もうひとつ例を出します。
具体例
たとえば次のように判断した場合、どういった思考の筋道が考えられますか?
Aさんにお願いがあるけれどAさんの機嫌が悪い。 仕方ないのでタイミングを改める。
こう判断したのはなぜでしょうか?
「機嫌が悪いと人は批判的になる」。
これも経験に基づいた「大前提」ですね。
①「機嫌が悪いと人は批判的になる」という大前提がある
②「Aさんにお願いしたい」という現象が起こる
③ルールにしたがって「タイミングをあらためる」と結論を出す
さらに整理します。
基準:機嫌が悪いと人は批判的になる
現象:Aさんの機嫌が悪い
結論:タイミングをあらためる
図にするとこうですね。
やはり、論理は正しいといえます。
演繹的思考を仕事や日常で使うメリット
では、演繹的思考はどういう時に効果があるのでしょう。
メリットは2つあります。
(1)説得力があがる!
(2) 迷わない!悩まない!
それぞれ解説します。
メリット(1)説得力があがる!
まず、隠れた大前提やルールを見える化することで、結論に必然性を感じさせることができます。
というのも、演繹的思考のプロセスでは、普段は隠れたままの「ルール」「事実」「常識」「法則」を見える化します。
①(ほんとは最初からあるんだけど)ルールがうまれる
②「ルールに従っていますよ」という論理がうまれる
③結論に必然性がうまれる
つまり「無意識」から「有意識」に変化します。
「有意識と気づき」は以下の記事で解説しています。
なぜなぜ思考で【脱!思考停止】そもそも『考える』って?
メリット(2) 迷わない!悩まない!
さらに、客観的な判断基準をもつことで、正しい判断ができるようになります。
さきほどの例をもう一度。
「Aさんに相談したいことがある」の時点では、複数の選択肢が存在しました。
・すぐに相談する ・お昼に相談する ・夕方に相談する ・明日に相談する ・その他
複数の選択肢に対して「今日はAさんの体調が悪い」という判断基準がうまれたことで、複数の選択肢の中から”正しい”結論を導き出したわけです。
もし逆に判断基準がなければ、すぐに相談して反感をかったかもしれません。
ちなみに「大前提」「ルール」以外にも「価値観」や「因果関係」が判断の材料になります。
・ルールは絶対条件として ・価値観、方針は行動基準として ・因果関係は理由として
すべて判断の材料になります。
「因果関係」は以下の記事で解説しています。
論点思考とは?【本当に解くべき問い】を見極めて『生産性』を上げる
論理的な文章の書き方【重要】なのは伝える順番
演繹的思考を仕事や日常で使いこなすには?【具体化する】
文章の書き方にもいえますが、論理的に説明をする際は、結論や一般論だけで終わってしまうと相手は理解できません。
なぜなら、抽象的すぎてイメージできないからです。
そこで、「具体例」を使って相手の理解度を深める必要があります。
まさにその具体的なたとえを使って説明することこそ、『演繹的な思考』です。
「具体と抽象」は以下の記事で解説しています。
具体化と抽象化の『真実』行き来しないと【無意味】
なぜなぜ思考で【脱!思考停止】そもそも『考える』って?
帰納的思考と演繹的思考の組み合わせ

帰納的思考を使って法則を導き出し、さらにその法則に別の現象を当てはめて演繹的に具体化します。
帰納的思考と演繹的思考の組み合わせ例①
具体例です。
複雑なので、図説しますね。

<帰納的思考> 現象①:トラは走るのが速い 現象②:シマウマは走るのが速い 現象③:イノシシは走るのが速い ↓抽象化(=法則になる) <演繹的思考> 法則:動物は走るのが速い 現象:ライオンは? ↓具体化 結論:ライオンは走るのが速いハズだ
AとBとCにあてはまるのが法則「動物は走るのが速い」です。
この法則をDにも当てはめることが具体化です。
演繹的な思考を使って具体化すると
「この法則から推測すれば、ライオンも走るのが速いはずだ」
という答えが導き出せます。
帰納的思考と演繹的思考の組み合わせ例②
最後にもうひとつだけ具体例です。

テストで高得点をめざしたい場合、演繹的思考を使って攻略法を考えましょう。
<帰納的思考> 現象①:2017年この章から多く出題されていた 現象②:2018年この章から多く出題されていた 現象③:2019年この章から多く出題されていた ↓抽象化(=法則になる) <演繹的思考> 法則:毎年、この章から多く出題される 現象:今年は? ↓具体化 結論:今年も、この章から多く出題されるハズだ。
過信は禁物!事実に基づく根拠を前提にしよう
演繹的思考で導きだされた結論は、判断基準となる大前提やルールが正しいからこそ成立します。
「ほんとうにこの判断基準でいいのか?」。
自問自答しながら、判断基準が事実に基づいて正しいことを確認しましょう。
たとえば、最後のテストの例でいうと、導き出した傾向(法則)が間違っている可能性もあります。
その場合、導き出された対策も必然的に間違っていることになりますね。
「判断のための事実整理」は以下の記事で解説しています。
思考が浅い人こそ『MECE』で考えるべき【深さも幅も大事】
思考を整理するならロジックツリーが【最強】
【まとめ】考え方をゼロから考えてはいけない【人生は有限】
帰納的思考や演繹的思考法という概念を知っていて使うのと、偶然使っていたのとでは大きく違います。
答えを考えるべきときに、「考え方」を知らないと、「考え方」から考えるハメになるからです。
「この場合、どう考えるべきなのか」
思考法に幅広くふれて学び、本質的なことに時間とエネルギーを使いましょう。
人生は有限。
答えは無限。
真面目に向き合うには、ブがワルイですから。
「本質を見抜く思考」は以下の記事で解説しています。
本質を見抜く3つの視点と思考法【VUCA時代をどう生きるのか】

KAI
「以上です。お疲れ様でした!」
参考 ・「演繹法と帰納法 論理展開の基本のキ 両者の混同にご注意」 - DIAMOND ONLINE ・「帰納法」 - GLOBIS UNIVERSITY ・「帰納法・演繹法・アブダクションの3つの推論過程の違い」 - ferret ・「演繹法と帰納法 論理展開の基本のキ 両者の混同にご注意」- DIAMONDO ONLINE ・「同じ点を探せば、帰納法や演繹法が理解できる」- DIAMONDO ONLINE ・「演繹法」- グロービス経営大学 ・「帰納法・演繹法・アブダクションの3つの推論過程の違い」 - ferret